ほら、ここって、この前の合宿でプロトネットじゃない？

じゃなくて、完成まで持っていかないと。

そう。分かればいいのよ。わかれば。

最終決戦前、とうとう主人公への気持ちを我慢できなくなったヒロインは彼を自分の部屋へと誘って…

けれど、主人公が彼女のことを拒むこともできず、ただ立ち尽くす。

とにかく今は細かいことを気にせずに、私のテキストをちゃんとチェックしなさい、ディレクター。

最初はヒロインの方から抱きついてくる。

座り尽くすという表現は何かおかしいわね？

坂っていうものはね、自らを作品の神と同じ状況に置くことで、キャラクターのセリフや行動が自然に浮かんでくるの。

いい作品を作りたいのでしょう？

だから、硬直しないの？

それにしても、こんな襦袢から元々の構想と変わってきてしまったわね。

まあいいわ。ここから主人公に決めてもらいましょう。

彼は彼女の肩を抱き、その目をしっかりと見つめてこういうの。

ほら、肩！

それから、しっかりと見つめて。

うん、いい感じ。

嬉しい、お兄様。

ね、ここは便宜的に私の方が年上という設定に変更してもいいかしら？

ね、お姉ちゃんって呼んでみて。

そ、そうね。ロールプレイではどちらかに統一しないといけないわね。

えっと、ごめんなさい。やっぱりいつも通り先輩でお願い。

だって、どっちも刺激が強すぎて、なんだかいけない気分になりすぎるもの。

大丈夫よ。寝転がっても、音声はちゃんと撮れてるから。

気持ちを確かめ合った二人、ヒロインは安心した表情で目を閉じ、力を抜いてベッドに倒れこむ。

ボイスレコーダーはどんな体勢でも仕事できるから便利よね。はい、次は主人公…

方を撫でながらこういうの？

いいんだね、先輩。

ええ、お願い。

あなたと過ごした日々も…

私の喜びが変わらない。

たくさんのことをされたら…

色々としてくれると…

ヒロインのワイシャツに手を伸ばし…

あなた、本当にゲーム作る気があるの？私…じゃなかった。ユーザーを喜ばせる気があるの？！

そして…

スカートを抜いてっと…

ブラは外してなかった？

もう…どっちでもいいわ。

全部見て。

じゃ、次は私のセリフね。

ああ、忘れない。先輩の黒く艶やかな髪も、白く透き通った肌も、この温もりも…

記憶に刻んで…

今にも泣きそうな…その可愛い顔も

次は主人公のセリフよ。

えっ？長すぎて覚えられない…？

先輩の

白く透き通った肌も

え？あぁ、ごめんなさい。最後の顔者のセリフが抜けてたわね。

私たち…過去も、今も、やっぱり一緒にはいられないの？

こんなに近いのに、こんなに振り合ってるのに…

やっぱり私まだこのシーンが整理しきれていないみたい

自分で書いておいてなんだけど、ヘタレよねこのヒロイン。

ただ、幸せな気持ちで向き合いたい、微笑んでキスしたい、クスクス笑いながら抱き合いたいの。

このシーンではヒロインの毛雑で終わってしまっていいのね？

ええ、確かにこのシーンは終わったわ。でもこのゲームにはエピローグというものがあるのよ。

ずっと一緒よ。

は～、私は一週間くらいずっと抱き合っていたいわよ。

あなたの重みを感じて

あなたの手のひらの温もりを感じて…

あなたの吐息を耳に…

もうあなたのセリフ。

私を抱きしめているの

今日の文のテキスト起こし終了。

ぜひ知りたいわね。

アドリブを続けて…