本気は出さん。……ああ、きっとな

力を見せるがよい、勇士よ。出来なければお前の命を貰うまで

およそ私に殺せぬものなど無い

魔境、深淵の叡智……

ああ

そうか

任せよ

ゆくぞ

しっ！

遅い！

そらっ！

力を示せ！ このスカサハに！

刺し穿ち、突き穿つ！『貫き穿つ死翔の槍（ゲイ・ボルク・オルタナティブ）』！！

これほどか……見事……！

うっ！

ぬかったわ……

久方ぶりの痛みだ……

私を殺せるモノは何処だ……ふっ、居る筈もないか

はぁ……修行にかまけたばかりにこの始末とは……

影の国よりまかり越した、スカサハだ。マスター、と呼べばいいのかな？ お主を

折角抑えている力を……何故お主は呼び起こそうとするのだ

……ん？　姿が変わった？こういう趣向か……折角顔を隠していたのにな

喜ばしいことではないぞ。私の力は強大に過ぎる。……だが、お主の執念は評価しよう

やはり顔を隠させてはくれないのだな。面白いものでもなかろうに……。この顔立ち、よもや気に入りでもしたか？

お前が求めるのは槍か？ それとも……。いや聞くまい、聞いても意味の無いことだ。求められても、私は叶えてやれるかどうか……

マスター……か。私が誰かと同盟を組むなどとは、考えた事も無かったな

私は死を失った存在だ。こうしてサーヴァントとして現界してはいるが、正しく英霊と言うわけでもない。さりとて完全な神霊でもない。私は死の機会を失い、そのため生者でも死者でもなくなった

私は、もう死ぬことはできない。美しい死も、醜い死もない。ただ、世界とその外側とが消え行く時まであり続けねばならん

世界の焼却……それが完全に果たされたとしても、私は死ぬのかどうか……。いいや、試して見る気にはなれんがな。私一人の願いのために、世界を道連れにはすまい……

はぁ……そうとも。私は望んでいるよ、死を。聖杯なるものが真に万能ならば、自分を殺してみせる何者かを寄越すがいいと。そして願わくば、その者が……かつてこの手で授けた槍を持つものであれば……

私の言うべきことでもないが、お主は世界を救うのであろう？ならば、いつまでも休んでいるのはよろしくないだろうな

私は影の国の女王。異境、魔境の主。誰も私と並び立つことは無い

孤独？ いや、そうでもなかったぞ。異境魔境の最果てとはいえ、血気盛んな勇士達が弟子として集っていたからな

クー・フーリンが居るな。けれど、少し大人しくなってしまったか……クランの猛犬とさえ呼ばれた男が……

私が好むのは、勇気ある者だ。ただの戦士ではいけない、ただの蛮勇でもいけない。勇気ある戦士こそ、私の好む可能性溢れる存在だ

嫌いなもの……か。勇気なき者はあまり好まんな

聖杯なぞに掛ける願いは私には無い。……と、言えればいいのだがな

厄介ごとに自ら首を突っ込むか？やれやれ、お主あの男によく似ているぞ

私はお前の師ではないし、母でもなく、姉でもなく、恋人でもない。だが……お前の誕生を祝うことを許せ。お前は祝福されるに値する勇士ではある